緋の艶 日本茜染めの世界
吉野ヶ里遺跡より出土したことでも有名な日本茜染めの絹織物。日本が世界に誇る伝統染色の世界。
「あけ」という言葉を辞書で引いてみる。そうすると、『赤い色。特に、「緋」「紅」「朱」』という意味が掲載されている。それぞれの色彩の違いを、ざっくばらんに説明すると、緋は、日の丸の暁の原色(江戸時代幕末の日の丸の中心円は、茜染めにて染色が施されていた)。紅は、舞妓の艶やかな口紅。本朱は、輪島塗りの漆芸。洗朱は、神社の建造物。そのような感である。ただし、日本固有の伝統色の中には、例えば、「紅緋(べにひ) #e83929」のような色もあり、それぞれの色彩の違いを杓子定規に区分することは難しい(逆にいえば、そこが日本固有の伝統色の奥深さであり、色彩幅の豊かさでもある)。
上掲の写真は、大正時代に発行された夏目漱石の「こゝろ」の実物(発行元:岩波書店 所蔵:Hiroomi Ueda )。同小説の本文中に、『精神的向上心のない者は馬鹿だ』 という一文がある。馬鹿という表現は幾分宜しくないが、「精神的向上心」という言葉と、洗朱の生地の色感のコントラストが何とも奥深い。
さて、前置きはこの辺にして、いよいよ主題に入りたいと思う。今回は、日本の伝統服飾、伝統染色界の至宝の1つと称される、「日本茜染めの緋の絹糸」の物語。
日本茜染めの原料は、山奥に自生する茜草の根。日本古来の草木であるが、西洋茜(別名:六つ葉茜)に比べると自生力や繁殖力に乏しく、現在は、その生育数自体が激減している。この貴重な原料を求めて、いつもの山奥へ・・・。ちなみに、茜草は多年草で、年数を経た個体の根は、色濃く力強い。冬になると、葉が枯れ、地表に霜が降りるため、根の採取は困難となる。
上掲の写真は、採取したての茜草の根の実物。生薬としても珍重されるが、このグロテスクなまでに生命感あふれる草の根が、日本茜染めの原料となる。これを煮出して染料液をつくり、絹糸を染め上げる。
日本茜染めにて最濃深に染め上げた「緋の絹糸」を使用した Hiroomi Ueda ブランドの作品。一般に、植物性染料を用いる染色は、発色力や染色堅牢度等の点において、動物性染料を用いる場合よりも劣る。しかし、日本茜染めの緋の絹糸の燦爛たる輝きは、帝王紫のそれにも劣らない。
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